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相続はとかくトラブルの原因になりがちです。「財産と言えば今住んでいる都内の家だけ。それもバブルの破裂でずいぶん価値が下がっているらしい。どうせ財産なんてないんだから相続の問題なんて生じない」と思っていませんか。
親も子供も相続には無関心だったのに、いざとなって遺産の評価額が明らかになると一事態は一変、兄弟が互いに権利を主張して争いになるという話は珍しくありません。
----生前から親は、息子夫婦に家を譲るつもりでした。他家に嫁いだ娘は両親が息子一家と同居する時、何も言いませんでした。そもそも娘はすでに持ち家だし、世話をしてくれた息子一家が家を相続するのは当然と思っていたので、遺言書も作っていませんでした。
娘も実家の古い家にこだわっていたわけではありません。しかし、いざ相続ということになり、家の評価額を聞くと気持ちが変わります。都会の一等地なので下がったとはいえ金額は小さくありません。
急に権利を主張したくなりました。両槻の生活費を面倒見てきたのは息子一家です。病気の介護をしてきた息子の妻には相続権はありません。しかし、遺産を分割するために、息子一家は住み慣れた家を売却しなければなりません----
遺言書が必要なのは財産の多い人だけとは限りません。また、遺言書を作成することは、大げさなことでも特殊なことでもありません。自分の意思を伝え、円満な相続ができるようにしておくのも、遺された家族に対する思いやりではないでしょうか。
遺言書のすすめ
遺言書であらかじめ遺産の分配を決めておけば、無用な争いを避けることができます。
もっとも遺言書はただ書けば良いというものではありません、法律的に有効であるためには、一定の手続きや要件を満たしていなければなりません。要件を満たしていないと、かえって遺言書自体がトラブルの原因にもなりかねません。
ふつう遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」、および「秘密証書遺言」があります。一般的な「自筆証書」と「公正証書」については、会報10号で弁護士の本橋先生も紹介下さっています。
自筆証書遺言
「自筆証書遺言」の要件は、全文を自筆で書き、自筆で日付をいれ、自分で著名し、押印することです。"全文自筆"という一点が重要です。ワープロやタイプで打ったものは一無効です。もちろん録音テープも無効です、「遺言者(被相続人)が自分で書けば良いのですから、いつでもどこでも作成できます、「どうせわずかな遺産しかないからと思っても、いざ書くとなると「どの子に何を遺せばいいのか」なかなか決められません。子供達の職業や家族構成など生活全般、果ては性格まで考え始めると、悩みが深くなって遺産分配も容易ではありません。しかし、だからと言って、遺言書をつくるのは難しいと思わないで下さい。法的に有効であるために冒頭の要件は必ず満たしていなければなりませんが、あとは気楽に考えても良いのです。
まず、遺言書は何回でも書き直しができます。遺
言書は本人が亡くなって初めて効力を発効するものですから、何度でも訂正ができます。たとえ古い遺言書を処分し忘れていても、日付がいちばん新しいものが有効となります。日付を書き間違えないように注意しましょう。たとえば「02年」としか書いてないと、平成2年なのか、2002年なのか分かりません。平成か西暦かはっきりしていれば、どれが一番新しい遺言書か分からないという事態を避けられます。
自筆証書遺言は簡単ですし、遺言書を書いたということを秘密にしておくこともできます。その代わり、遺族が遺言のあることに気がつかないというリスクもありますし、また、本当に自筆かどうか認定が困難で裁判沙汰になるという場合もあり得ます。それだけでなく、遺言書が紛失したり、隠されたり、改ざんされたりの不安もないとはいえません。そうした不安がある場合は、「公正遺言証書」にしておけば安心です。
公正証書遺言
「公正証書遺言」は、公証役場に行き、公証人に作成して貰い、原本は公証役場で保管します。遺言の内容を口頭で述べ、遺言書は公証人が作成しますので、公証人の手数料がかかります。対象となる財産の額にもよりますが、数千円から数万円の手数料がかかります。また、公証人だけでなく2名以上の証人が必要です。遺言書を証人に読み聞かせ、遺言者と証人のそれぞれが自筆で署名し捺印します。当然、遺言書の内容を自分だけの秘密にしておくことはできません。紛失の心配や改ざんの心配はありませんが、自筆証書に比べるとずいぶん面倒ですね。
秘密証書遺言
「秘密証書遺言」は両者の中間です。自筆証書と違って、代筆して貰っても良いし、ワープロでも構いません。遺言者が自ら署名し押印し封書に入れ封印します。遺言があることは秘密にできませんが、封書の中身、つまり遺言の内容については秘密を保てます。
公証人がこの封書が遺言書であること、遺言者の住所氏名などを記述し、さらに本人と2名以上の証人が封書に署名押印します。遺言書の紛失や改ざんの不安はありませんが、公正証書遺言と違って家庭裁判所で遺言書であるとの検認を受けなくてはなりません。自筆証書遺言と秘密証書遺言は、なぜかほとんど使われていません。
遺言書は思いやり
遺言書を書くときは、すべての財産を対象にしなくても良いのです。全財産の分配を決めておかなくては遺言書が書けないということはありません。遺言書に指定がない財産については、「分割協議」で分配を決めることになるだけです。ですから、「この財産はこの人に」と指定したいものだけ、書いておけば良いのです。
また、夫婦に子供がない場合、すべての財産を長年連れ添った妻に相続させたいときにも、遺言は有効です。というのは、子供がいれば、配偶者と子供が法定相続人ですが、子供がいない場合、妻の他に、夫の両親、両親がいない場合には兄弟も法律上、相続の権利を持ちますので、妻に全財産を遺したいときには、遺言が必要です。
あるいは法定相続人ではない人に財産を遺したいとき、たとえば面倒を見てくれた長男の妻にも財産を遺したいときなど、遺言書が効力を発します。遺言書を作成することで、感謝や思いやりを財産という形で伝えることも可能です。
時が移れば自分も周りの人々の状況も変わります。いつでも書き直すことができるのですから、気楽な気持ちで遺言書をつくってみてはどうでしょうか。相続の問題を離れても、遺言書を書くということは、ご自分の人生を見つめるいい機会かもしれません。生活や家族など人生を見直す良いチャンスにもなるでしょう。
いくら仲良しのご夫婦でも、遺言書は一人一人別々に作成しなければなりません。そうでないとせっかくつくった遺言書が無効になります。どういうわけか法律上、「共同遺言」は禁止されていますので、覚えておきましょう。
また、いくら遺言書があっても、法律が定めた法定相続人の権利がありますから、遺言者(被相続人)の意志だけで相続を決めることはできません。遺言者の意志で自由にできるのは遺産の半分と考えて下さい。残りの半分は「遺留分」として、法定相続人の権利になります。ただし、法定相続人が権利を放棄すれば、遺言書の通りの相続が可能です。
法定相続人の遺留分と分割協議
法律は、法定相続人が遺産を相続する権利の割合を決めています。
さて法律上、妻は夫の遺産をどの程度相続できる権利があるでしょう。妻でも夫でも、法律上の配偶者は、同じ扱いです。子供がいる場合、配偶者は遺産の2分の1を相続する権利があります。残り2分の1を子供が分けます。
子供がいない場合、3分の1は両親のものになりますから、配偶者は3分の2です。子供も親もいない場合、配偶者は4分の3、4分の1は兄弟姉妹の権利となります。子供も両親も兄串姉妹もいない場合、全額が配偶者のものになります。
夫(妻)がすでに亡くなっている場合、夫(妻)の両親の遺産の相続権は妻(夫)にはありません。
しかし、子供がいる場合、夫(妻)に代わって子供が遺産を相続できます。つまり、夫が相続する筈であった分は、子供達全員で相続することになります。
しかし、「法定相続分」は、あくまで民法がその権利を認めているだけであって、相続人同志が話し合って違う割合で相続することは一向に構いません。
相続人同志が、遺産をどのように分け合うか話し合って決めることを「分割協議」と言います。法定相続人がお互いに納得するなら、遺言書とは異なる相続も可能です。分割協議がまとまらないときには、裁判に頼るということになり、時間もかかります。
相続税の申告は、相続が発生してから10ヵ月以内に行なわなければなりません。相続税の算定に際して、さまざまな特典があります。たとえば、配偶者は1億6千万円までの相続は相続税を免除されますし、小規模の宅地への課税は大きく軽減されます。
しかし、分割協議が成立せず申告納税の期限内にまとまらないと、こうした特典が受けられなくなることがありますので注意しましょう。 |
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